今回の「浄土宗の事」は枕経編です。
枕経(まくらぎょう)とは寺が死亡の連絡を受けた際に、すぐに僧侶が赴き、死者の枕元で経を読むことです。つまり、人が亡くなった際に一番最初にすることが枕経になります。
古くは江戸時代に臨終の検査をする役割を寺院が持っていたために検葬という呼び方もあったそうです。
さて、この枕経ですが、どうして行うと思いますか?
「昔からの事だし…お寺さんもやると言うから…」などとお考えの方もいるのかもしれませんが、昔から残っていることにも、お寺がすることにもちゃんと意味があります。
過去の二回の「浄土宗の事」で仏教の最終目的とは何なのか、そして浄土宗ではどのように成仏するのか、この二点について特にしっかりとお伝えしてまいりました。
もう一度おさらいすると、仏教の最終目的は迷いの世界からの解脱である成仏をすること、そしてそのために浄土宗では阿弥陀仏の西方極楽浄土に往生して成仏を目指しているということです。
そしてその際に必要な事の一つが枕経になります。
枕経をはじめとして様々な法要、法事などのお参りではその場のお参りの意味に合った経をお称えしています。枕経においてお称えしている経典の主となる部分は「阿弥陀仏を信じ、阿弥陀仏の仏弟子(ぶつでし)となる」という部分になります。言い換えるならば、仏様を信じ、その仏様の弟子となり、修行させていただく、その門出となるのが枕経ということになります。
枕経においては僧侶が亡くなられた方、つまり仏弟子となる方の髪を疑似的に剃刀で剃るような御作法が存在します。この御作法の際には「髭と髪の毛を剃り落とすとしたならば、衆生は煩悩を断ち除き、必ず覚りにいたることを願いなさい」という経をお称えします。髭と髪の毛を剃り落とすことは出家する事、つまり俗世間と繋がりを断つことも意味しています。すなわちここで家族、親族、友人などとの関係も切れ、仏弟子としてのスタート地点に立つということになります。
従って枕経は亡くなられた方の今後において非常に重要なお参りです。御家族や御親族の方にとっては亡くなられた直後の大変な時とは思いますが、故人の新たなる門出を送り出すような気持ちで参列していただければと思います。
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